何故高級素材に形態安定素材がないのか。

昨日とある知人よりこんな質問を頂きました。「質問なのですが!ワイシャツで、高級なものほど形態安定とかノンアイロンとかないのは、なぜでしょうか。」


良い質問でしたので、ブログで回答すると言ったのですが、今日その回答を。

当店の古いお客様から以前にこのようなことをお聞きしました。「私の若い時は80番双糸の生地が出た時は、高級番手がシャツ生地に出たと思った」数十年前は80番手の生地が一番細い時代もあったようです。概ね既成品で並んでいるような生地は80番手くらいではないかと思います。

当店でインポートの一部の生地に、敢えて80番手くらいの糸を使って、表現しているものもありますが、概ね100番手くらいの糸からのものをセレクトしております。

大昔はシルクの生地でシャツを作っていたと思いますが、シルクとなると、光沢があり、そして肌にさらっとあたって、気持ち良いものであると誰もが想像できます。

シルクというと、シャツだけではなく、着物もシルク。加賀友禅などは当たり前ですが、シルク(絹)素材でございます。

ただ、シルクは綿素材に比べると、扱いにくい。当たり前ですが、ドライクリーニングですし、汗ジミなど付くと染み抜きに出さなくてはいけない。白の生地など、綿が植物から作るのに対して、シルクは蚕から作るので、動物性蛋白質の為に、ほっといても黄ばんでくる。

そこで、綿素材をどんどん細くして、シルクに近づけていったのだと思います。今では200番の細番手の生地まで出ています。お客様に200番手の生地を触って頂くと、ほぼ全ての人がこう言われます。「つるつる、シルクみたい」と。

話が長くなりましたが、綿素材がシルクのような肌触りに近づけようと努力した背景から、これに生地の加工で、形状記憶にし、シワのない素材にすることが高級素材ではないのです。高級素材は柔らかく。ある程度シワにもなります。


またそれ以上の違いというと、嗜好品であるということもあります。お洒落の好きな人は、週末に自分のシャツを全部自分でアイロンをかけるという方もいらっしゃいます。週末には靴を磨き上げる方もいると思います。


それらを簡潔にするということは、嗜好品から離れていく。所謂作業着になってしまうと思うのです。ビジネスウエアは作業着だと思っている方は、とにかくシワにならないメンテナンスフリーのものをお選びになると思いますが、お洒落道具の一つだと思われる方は、そこにはこだわりません。


これを着物に置き換えますと、形状記憶加工した加賀友禅を求める方はいないと思います。なぜならばそれは嗜好品だから。


ここで矛盾を感ずる方もいらっしゃるかと思います。シルクの生地を綿素材に置き換えたのは、綿素材を形状安定素材(形状安定素材には綿100%のものもありますが)に置き換えたのと一緒ではないかと。


一理あります。嗜好品であれば、シルクをずっと着続ければいいわけですから。そういう意味では、シルクに対して、ビジネス用途に使えるように作っていったのが、綿素材のシャツ生地なのかも知れません。ただ決定的に違うのは、シワを作らないように加工したということだと思います。ナチュラルなシワは私はあっていいと思いますし、シワのできないシャツを着ているのは、この人はビジネス用途と割りきって着ていると判断するからです。もっと大袈裟に言うと、アイロンが面倒だから?洗濯を簡単に済ましたいから?


嗜好品を楽しむということは、面倒なことも楽しむことだと思います。ですから、高級素材に形状安定素材がない、逆に高級素材なのに、形状安定にしてしますと、高級感を失ってしまう。そういうことだと思います。


ただ、綿素材であってもシワにならないような努力もしております。

1433.jpg
トーマスメイソンの100番手の生地は、一日着ててもそんなにシワが気になりません。大汗でもかかない限りはナチュラルなシワで一日を過ごせます。他のブランドに比べると糸の張りが強くコシがあるわけです。これが糸番手が120番、140番と上がっても他のメーカーの生地に比べると、張りがあるわけです。トーマスメイソンのゴールドライン(140番手双糸)の人気が高いのはそういうこともあると思います。
1312.jpg
そして、最高級番手200番双糸のDJアンダーソン。数値通りの肌触りです。どちらもお試し頂ければと思います。


ということで、本日のブログを終わらせて頂きます。


↓ブログランキングクリック宜しくお願い致します。
ブログランキングのバナー
↑ブログランキングのバナーのクリックをお願いします。

Facebookのいいね!
 シェア